病理診断科
主な診療内容
病理学とは、疾病/疾患の本態を明らかにする学問です。
京都中部総合医療センター 病理診断科では、臨床各科から提出される臓器・組織の病理診断を行なっています。病理診断とは、患者さんより採取された生体材料を病理学的に評価する医行為で、生検などによる組織診断、手術材料の外科病理診断、細胞診断、術中迅速診断、病理解剖などが含まれます。
貴重な疾患は症例報告などで学会誌に発信しています。また、将来的に、患者様の同意を得て、病理検体を用いた臨床研究を計画してまいります。
実績・特徴
精度の高い病理診断を行なうために、日常で行なっている業務内容について説明します。
1.生検による組織診断
目的は、腫瘍、炎症性疾患、代謝疾患などの確定診断です。
適応臓器は、消化管・肝胆膵系(口腔、食道・胃、十二指腸、大腸、肝・胆管・胆嚢、膵)、呼吸器系(鼻腔、咽頭、喉頭、気管、肺)、泌尿生殖器系(腎、膀胱、子宮、卵巣、乳腺)、内分泌臓器(甲状腺、副甲状腺)、中枢・末梢神経、筋・関節・骨、皮膚などです。手技として、外科的切除や針生検(内視鏡:腹腔鏡、胸腔鏡、膀胱鏡、エコー、CTガイド下など)が用いられます。
具体的には、内視鏡などで採取された組織が、癌か癌でないか、癌であればどのような組織型・悪性度であるのか、分子標的となり得る遺伝子、タンパク発現があるのかなどを評価します。診断には免疫組織化学染色・特殊染色を駆使します。免疫組織化学染色では、約50種類の抗体を駆使し、的確な診断を行います(ベンタナ ベンチマークULTRA, ロシュ社)。特殊染色では、組織内物質や病原体を色鮮やかな色素で染色し、診断の補助として役立てています。
2.外科的手術材料の病理診断
外科的に提出された腫瘍は、肉眼的に発生部位、腫瘍の肉眼型、数、サイズ、浸潤様式などを評価し、必要な部位を切り出し顕微鏡で観察します。
組織学的診断では、腫瘍の組織型、浸潤の程度(深達度)、浸潤様式、リンパ管・静脈侵襲の程度、リンパ節転移の有無、切除断端の腫瘍の有無、癌に遺伝子発現異常があり、分子標的治療が可能であるかなどを明らかにします。この報告に基づき主治医が、再手術、化学療法、放射線療法の適応を決定していきます。
このように、病理診断は、その結果が患者様の治療方針に大きく影響し、予後を左右するため責任の重い仕事です。現在、3人の日本病理学会認定病理専門医が担当しています。我々は、疾患の病理組織診断の質の向上に日々努めていますが、稀少疾患、難解な疾患に関しては、日本病理学会等へコンサルトし、より正確な診断を得るようにしています。
3.細胞診断
目的は、主として癌のスクリーニング診断; 陽性、陰性、疑陽性の判定、クラス分類になります。対象は、子宮頚部、乳腺、喀痰、気管分泌物、尿、胸水、腹水などの体腔液です。メリットは、検体の採取が比較的容易で、侵襲が少なく繰り返しの採取が可能なことです。手技として、剥離細胞診や穿刺吸引細胞診 (FNAC)などがあります。液状化細胞診(LBC)の標本作製装置も導入しており、診断の効率化やより精度の高い診断を行えるよう心がけています。日本臨床細胞学会が認めた細胞検査士と細胞診専門医により診断されます。
出張迅速細胞診断(rapid on-site cytologic evaluation: ROSE)として、当科では内視鏡室への出張細胞診断を行っています。超音波内視鏡下で採取された検体に、目的の細胞がとれているか否かを顕微鏡で確認します。
4.術中迅速組織診断
手術中に採取された検体(細胞・組織)を用いて病理診断を行い、手術方針の決定に寄与します。がんリンパ節転移検査(OSNA™法)として、術中迅速では診断が困難な悪性腫瘍の微小なリンパ節転移検出を可能とする遺伝子レベルの検査です。当科では2023年2月に導入し、主に乳がんのセンチネルリンパ節転移の有無を確認するために用いています。今後、消化管の腫瘍にも展開する準備を進めています。
5.病理解剖
目的は、不幸にして亡くなられた患者さんの病態を明らかにすることです。ご遺族の承諾をいただき(インフォームドコンセント)患者様のご遺体を解剖し肉眼的、顕微鏡的、遺伝子発現解析などの分子レベルでの詳細な解析を行ない、疑問点を明らかにします。病理解剖後は、CPC(Cinico-Pathological Conference): 臨床病理カンファレンスを行い、臨床的、病理学的に、臨床症状・診断・治療の面での問題点を解決し、治療効果判定を行なうことで、臨床へのフィードバックにつとめ、そのことがひいては医学・医療の進歩の基盤となり得ます。これにより、同様の疾患に関するメカニズム解明や人体病理学的研究へと発展します。
6.その他
外部委託検査として、以下の検査を実施しています。適切な検体処理を行なうことで、精度の高い結果を得ています。
- 腎生検(蛍光抗体、電子顕微鏡)
- がん遺伝子検査(オンコマイン、肺癌EGFR、RAS/BRAF、他遺伝子パネル検査)
- フローサイトメトリー(悪性リンパ腫など)
- 骨髄検査(血液疾患)
病理専門医は神経病理学を専門としており、神経疾患のコンサルテーションを院外から受け付けています。
スタッフ紹介
伊東 恭子(いとう きょうこ)
役職 | 病理診断科部長 |
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卒業大学・卒年 | 神戸大学医学部医学科(1982年卒) |
専門 | 病理学一般、神経病理学、発達神経生物学 |
資格 | 医学博士(神戸大学 第1120号)、京都府立医科大学 名誉教授、京都府立医科大学 特任教授、屍体解剖資格認定証明書交付(第6515号)、日本病理学会病理専門医・研修指導医(第2156号)、日本臨床細胞学会細胞診専門医(第2394号)・教育研修指導医(第0368号)、日本病理学会分子病理専門医(第0090号) |
伏木 信次(ふしき しんじ)
役職 | 京都中部総合医療センター総長 |
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卒業大学・卒年 | 京都府立医科大学医学部医学科 (1974年卒)、京都府立医科大学大学院医学研究科満期修了退学(1981年) |
専門 | 病理学一般、神経病理学、医学研究倫理・研究公正 |
資格 | 京都府立医科大学研究質管理センター/特任教授・医学博士、京都府立医科大学 名誉教授、屍体解剖資格、日本専門医機構認定・日本病理学会認定 病理専門医・研修指導医 |
丹藤 創(たんどう そう)【非常勤医師】
役職 | |
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卒業大学・卒年 | 京都府立医科大学医学部医学科 (1996年卒)、京都府立医科大学大学院医学研究科満期修了退学(2002年) |
専門 | 病理学一般、神経病理学 |
資格 | 京都府立医科大学大学院医学研究科病態病理学 助教・医学博士、屍体解剖資格、日本専門医機構認定・日本病理学会認定 病理専門医・研修指導医、日本臨床細胞学会細胞診専門医 |
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